【コラム】超老舗大国 日本
日本で一番高いのは富士山、では二番目は、と言われると以外と知らない、なんてよく言われますね(答えは山梨県の北岳で3193メートル)。
同じように日本で一番古い会社は金剛組、と言うのは意外と知られている豆知識だったりするのですが、第二位は?と問われると知らない人が大半でしょう。
それどこから、二位はおろか、”世界の”一位から第七位まで全部日本の企業(パチパチパチ)だなんてまず知っている人はいなかったりします
まさに日本は世界に冠たる『老舗超大国』なんですね。
そんな訳で、今日は私たちの身近にあるけれど、実は世界的には非常に珍しい、日本の宝『老舗企業』の話などしてみましょうか。
☆ 日本で一番古い会社は世界で一番古い会社 ☆

さて、冒頭の日本で一番古い会社はどこか?と言う話は、人によっては一度や二度は聞いたことがあるでしょう。
日本で一番古い企業は、『金剛組』という建設会社。
場所は大阪の天王寺区にあります。
578年に四天王寺建立のため聖徳太子から招聘された百済人、金剛重光が設立したといいますから、実に創業1400年。
勿論、日本どころかダントツで世界最古の企業なのです。
つまり世界最古の企業は大阪にある、ということですね。
実のところ最古だけでなく世界の老舗企業ベスト5はすべて日本企業。
金剛組を筆頭に法師(旅館 石川)、慶雲館(705年 旅館 山梨)、古まん(717年 兵庫)、善吾楼(旅館 石川)、源田紙業(771年 紙業 京都)あたりがすべて創業1300年オーバーコース。
ちなみにあの有名な羊羹の虎屋の元は未確認ながら793年で平安遷都の前年。
これらを含めて日本には創業1000年以上の企業が7社もあります。
☆ 100年企業は当たり前!? でも世界では極希少 ☆

ちなみに日本以外にある企業で一番古いのが、オーストリアのザルツブルグにある、シュティフツケラー・ザンクト・ペーター(Stiftskeller st.peter)というレストランで803年創業といいますから、日本の企業がいかに凄いかがよくわかるというものです。
日本の場合創業500年で32社、200年ではぐっと増えて3146社あるのだそうですが、世界を見渡しても創業200年以上の企業は実は5586社しかないそうです。
つまり実に半数以上が日本の企業ということになる訳です。
国別に見ると第二位のドイツが837社、オランダ222社、フランス196社だそうですから、日本の多さが際立っていますね。
更に 更に!100年以上ともなれば驚くなかれ実に3万3069社!
こうなるとある意味ありふれた企業とさえ言えそうですが、それどころか個人事業や小規模事業を含めるともっと数が多く、一説には10万事業者近いという推計さえあるのだそうです。
因みにこれは 世界の老舗企業の、実に80%を占めるということです。
☆ 老舗の秘密は家督相続制 ☆
実は日本が超老舗大国であることは、裏返して言えば世界の大半の国では、会社は一世一代のもので、長年にわたって継承するものではない、ということを意味します。
では日本の企業はどのようにして会社を数百年にもわたって維持し続けてきたのでしょうか。
その一つの答えが、日本独自の習慣である家督相続です。
この家督相続については又別の機会に取り上げたいと思いますが、面白いのは関東では長男が家督を相続するのが一般的であったのに対し、関西の商家では女系が家業を継ぐ、という習慣も存在したということです。
これは 長子相続ではどこかで必ず経営者として不適格な後継者が出る可能性があるので、財産は長子相続するものの、最も優秀な人材を番頭にして娘婿として家業を継承してもらう、ということなのだとか。
いかにも古くから商売が盛んだった上方らしい考え方ですね。
今風に言えば資本と経営の分離と言えるかもしれません。
さて、老舗の努力は資本と経営の分離だけでなく、時代の変化に合わせて業態を変化させることで生き残ってきたという側面もあります。
例えば、 東海地方で一番の老舗は岐阜にある鍋屋(1560年創業)という会社ですが、名前のとおりの鍋の製造から金属加工へ、そして伝導部品メーカーへと脱皮し、450年あまりの歴史を生き抜いてきました。
現在では、鍋屋(及び鍋屋バイテック)は半導体材料関連の会社を買収するなど業態を転換して今に至っているのです。
このようにM&Aを始め様々な方法で時代の変化に対応してきた企業は以外と多く、伝統を守りながらも変化を続け200年以上続いている老舗企業だけでも、鍋屋のほかにも、住友金属鉱山(創業1590年)、月桂冠(創業1637年)、鈴与(創業1801年)、伊藤忠商事(創業1858年)など名だたる企業が並びます。
☆ 後継者難で消えた老舗企業 ☆
一方で後継者難で消え去っていく老舗企業の話も最近では本当に多く聞くようになりました。
いや、近年ではむしろ伝統ある企業ほど、先に廃業に追い込まれているというデータもあるほどです。
2010年9月、岐阜の菓子製造業、太田屋半右衛門が廃業、16代448年の歴史に幕を下ろしました。
太田屋半右衛門の商品、『志古羅ん(しこらん)』は豊臣秀吉の命名といわれる、単一商品としては日本最古のブランドだったのですが、16代目の急死により後継者がいなくなり廃業を余儀なくされたのです。
仮にですが、もし誰かが事業をバトンタッチしてくれていたなら、日本最古のブランドはそのまま引き継がれていたかもしれません。
そう思うと、とても残念なことです。
&Bizの役割の一つは、こうした老舗企業が、もっと簡単に次の世代にバトンタッチすることができるようにすること。
世界に誇る日本の宝である老舗企業の暖簾を、何とか守っていきたいものですね。
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